決算手続の全体像
この講義では、日々の取引を記録したあと、決算日に向けてどのような順序で手続を進めるのかを全体像として学びます。期中記帳、試算表の作成、決算整理、帳簿の締切、財務諸表の作成という流れを、役割の違いに注意しながら整理します。個別の決算整理事項の詳しい処理には立ち入らず、決算手続の道筋をつかむことを目標にします。
この講で分かるようになること
期中記帳から決算整理、締切、財務諸表作成までの流れを説明できる。
- 試算表・決算整理・財務諸表の役割の違いを区別できる。
- 決算手続を時系列で並べられる。
- 決算の各段階で何を確かめるのかを説明できる。
前提知識
- 仕訳の基本
- 総勘定元帳への転記
- 借方と貸方の意味
- 勘定口座の残高の見方
ひとつ前の講:仮受消費税の増加は借方か貸方か
要点
- 決算は、期中記帳の内容を決算日に合わせて整理し、最終的に財務諸表へまとめる一連の手続である。
- 試算表は、帳簿記入や残高を確かめるための表であり、財務諸表そのものではない。
- 決算整理は、期末時点の正しい収益と費用、資産と負債を示すために行う。
- 締切は、当期の帳簿を区切って次期へつなぐための手続である。
- 財務諸表は、決算手続の結果をまとめた最終的な報告資料である。
判断のルール
- 期中の取引はその都度仕訳し、総勘定元帳へ転記する。
- 決算のはじめに帳簿の集計状況を確かめるため試算表を作成する。
- 試算表で残高を確認したあと、必要な決算整理を行う。
- 決算整理後は当期の帳簿を締め切り、財務諸表を作成する。
- 手続の順序と各資料の目的を混同しない。
例題
例題1例題1 決算手続の順序を確認する
次の語句を、決算手続として適切な順序に並べなさい。語句は「財務諸表作成」「決算整理」「期中記帳」「締切」「試算表」である。
答え正しい順序は、「期中記帳 → 試算表 → 決算整理 → 締切 → 財務諸表作成」です。
考え方まず、日々の取引を仕訳して帳簿に記録する期中記帳が出発点です。次に、帳簿の集計状況を確かめるために試算表を作ります。その後、期末時点の実態に合わせる決算整理を行い、当期の帳簿を締め切ります。最後に、その結果をまとめて財務諸表を作成します。なお、この例題では借方・貸方の金額計算はありませんが、決算の流れを正しく言えることが重要です。
確かめ試算表のあとに決算整理があり、財務諸表作成は最後になっているかを確認します。締切を決算整理より前に置いていないかも見直しましょう。
例題2例題2 試算表の役割を数字でみる
ある店の決算前の集計結果が次のとおりであった。現金50,000円、売掛金30,000円、仕入80,000円、買掛金20,000円、資本金100,000円、売上40,000円。これらを残高として並べたとき、借方合計と貸方合計を求め、試算表で何を確認するのか答えなさい。
答え借方合計は160,000円、貸方合計も160,000円です。試算表では、各勘定の残高を一覧にして、借方合計と貸方合計が一致しているかなど、帳簿の集計状況を確認します。
考え方借方に並ぶのは、現金50,000円、売掛金30,000円、仕入80,000円で、合計は160,000円です。貸方に並ぶのは、買掛金20,000円、資本金100,000円、売上40,000円で、合計は20,000円+100,000円+40,000円=160,000円です。借方と貸方の合計が一致しています。このように、試算表では各勘定の残高を一覧にし、借方合計と貸方合計が一致するかを確かめます。ただし、一致したことだけで全ての誤りがないとは限らず、帳簿の集計状況を確認するための表であると理解します。
確かめ借方は50,000+30,000+80,000=160,000、貸方は20,000+100,000+40,000=160,000です。左右が一致していることと、試算表が集計状況を確認する表であることを確かめます。
例題3例題3 決算整理前後の考え方をつかむ
決算前の試算表に、前払家賃12,000円が計上されている。これは4月1日に1年分を支払ったもので、決算日は9月30日である。決算手続の全体像に照らして、この金額について決算整理が必要な理由を説明しなさい。また、当期分と次期分の金額を求めなさい。
答え決算整理が必要な理由は、支払時点で記録した金額を、決算日時点の実態に合わせて当期分と次期分に分ける必要があるからです。当期分は6か月分で6,000円、次期分も6か月分で6,000円です。
考え方4月1日から翌年3月31日までの12か月分として12,000円を支払っているので、1か月あたりは1,000円です。決算日9月30日までに経過したのは、4月から9月までの6か月です。したがって、当期に属する金額は1,000円×6か月=6,000円となります。残りの6,000円は次期に属する金額です。この例では詳しい仕訳の学習が中心ではなく、決算整理が期末時点の実態に合わせるための作業であることを確認するのが目的です。なお、関連する勘定科目としては家賃と前払家賃を考えます。借方・貸方の方向まで踏み込んだ詳しい処理は本講の範囲外ですが、当期分6,000円を費用、残り6,000円を資産として考える点が重要です。
確かめ12,000円を12か月で割って1か月1,000円と求め、4月から9月までの6か月分が当期分になるかを確認します。当期6,000円、次期6,000円で合計12,000円に戻ることも確かめましょう。
よくある間違い
試算表を作った時点で決算が終わったと考えてしまう。
決算整理と締切を同じ作業だと思ってしまう。
財務諸表は期中の帳簿からすぐ作れると考え、決算整理の必要性を見落とす。
決算手続の順序を入れ替えて覚えてしまう。
試算表・精算表・財務諸表の役割を区別できていない。
この講の用語
- 試算表しさんひょう
- 各勘定の借方・貸方の合計や残高を一覧にして、帳簿記入の正確さや集計結果を確かめるための表。
- 決算整理けっさんせいり
- 決算日に合わせて、収益・費用や資産・負債の金額を当期の実態に合うように直す手続。
- 締切しめきり
- 当期の勘定の記録を区切り、損益や残高を整理して次の期へつなぐ手続。
- 財務諸表ざいむしょひょう
- 決算の結果をまとめて表した書類で、3級では主に損益計算書と貸借対照表を指す。
- 決算けっさん
- 一定期間の経営成績と財政状態を明らかにするために行う一連の手続全体。
章立て
- 0:00導入この知識ポイントで判断できるようになることを確認します。
- 0:19中心概念取引の意味と基本的な考え方を整理します。
- 0:59重要用語問題文で意味を取り違えやすい用語を確認します。
- 1:41基本ルール仕訳や計算で使う規則を整理します。
- 2:06判断手順問題を解くときの順番を確認します。
- 2:36例題1基本的な取引を確認します。
- 3:09例題2別の条件で判断を確認します。
- 4:24例題3計算または応用の判断を確認します。
- 5:46よくある誤り誤りやすい考え方を修正します。
- 7:25まとめ重要事項を一枚で整理します。
講義の書き起こし
無料公開している講義は、読んで確認できるように全文を載せています。
女性講師第69講は、決算手続の全体像です。学ぶ中心は、期中記帳から試算表、決算整理、締切、財務諸表作成までの流れと、それぞれの役割の違いです。
男性講師決算って、最後にまとめる作業全体を指すんですね。
女性講師はい。決算とは、一定期間の取引記録をまとめ、その期間のもうけと期末時点の財産の状態を明らかにするための一連の手続です。日々の仕訳だけでは、外から見やすい形にはまだなっていません。
男性講師つまり、期末に整理して見える形にするんですね。
女性講師そのとおりです。本講では細かな処理の深掘りではなく、どの段階で何をし、なぜその順序で進むのかをつかみます。全体の道筋を説明できることが目標です。
男性講師順序と目的をセットで覚えるのが大事ですね。
女性講師まず出発点は期中記帳です。取引をその都度仕訳し、総勘定元帳へ転記しておきます。そのうえで決算時に試算表を作り、各勘定の借方・貸方の合計や残高を一覧にして集計状況を確かめます。
男性講師試算表は、確認のための表なんですね。
女性講師はい。そして試算表のあとに決算整理を行います。決算整理は、決算日時点の実態に合わせて、収益・費用や資産・負債の金額を整える手続です。その後に帳簿を締め切り、最後に財務諸表を作成します。
男性講師似た言葉が多いので、用語の違いを整理したいです。
女性講師重要用語を確認しましょう。試算表は、各勘定の借方・貸方の合計や残高を一覧にして、帳簿記入の正確さや集計結果を確かめるための表です。決算整理は、決算日に合わせて金額を当期の実態に合うように直す手続です。
男性講師締切と財務諸表は、どう区別しますか。
女性講師締切は、当期の勘定の記録を区切って次の期へつなぐ手続です。財務諸表は、決算の結果をまとめた最終的な書類で、3級では主に損益計算書と貸借対照表を指します。決算は、これらを含む一連の手続全体です。
男性講師では、進め方の基本ルールを並べて覚えたいです。
女性講師基本ルールは5つです。期中の取引はその都度仕訳し、総勘定元帳へ転記する。決算のはじめに試算表を作成する。試算表で残高を確認したあと、必要な決算整理を行う。決算整理後は帳簿を締め切り、財務諸表を作成する。さらに、手続の順序と各資料の目的を混同しないことです。
男性講師試算表のあとに決算整理、そのあと締切ですね。
女性講師例題1です。『決算手続の順序を確認する』を確認します。次の語句を、決算手続として適切な順序に並べなさい。語句は「財務諸表作成」「決算整理」「期中記帳」「締切」「試算表」である。
男性講師どの事実を確認し、どのように答えればよいですか。
女性講師まず、日々の取引を仕訳して帳簿に記録する期中記帳が出発点です。次に、帳簿の集計状況を確かめるために試算表を作ります。その後、期末時点の実態に合わせる決算整理を行い、当期の帳簿を締め切ります。最後に、その結果をまとめて財務諸表を作成します。なお、この例題では借方・貸方の金額計算はありませんが、決算の流れを正しく言えることが重要です。 答えは、正しい順序は、「期中記帳 → 試算表 → 決算整理 → 締切 → 財務諸表作成」です。 試算表のあとに決算整理があり、財務諸表作成は最後になっているかを確認します。締切を決算整理より前に置いていないかも見直しましょう。
男性講師次は例題2です。『試算表の役割を数字でみる』を確認します。ある店の決算前の集計結果が次のとおりであった。現金50,000円、売掛金30,000円、仕入80,000円、買掛金20,000円、資本金100,000円、売上40,000円。これらを残高として並べたとき、借方合計と貸方合計を求め、試算表で何を確認するのか答えなさい。
女性講師借方に並ぶのは、現金50,000円、売掛金30,000円、仕入80,000円で、合計は160,000円です。 貸方に並ぶのは、買掛金20,000円、資本金100,000円、売上40,000円で、合計は20,000円+100,000円+40,000円=160,000円です。 答えは、借方合計は160,000円、貸方合計も160,000円です。試算表では、各勘定の残高を一覧にして、借方合計と貸方合計が一致しているかなど、帳簿の集計状況を確認します。 借方は50,000+30,000+80,000=160,000、貸方は20,000+100,000+40,000=160,000です。
男性講師最後に例題3です。『決算整理前後の考え方をつかむ』を確認します。決算前の試算表に、前払家賃12,000円が計上されている。これは4月1日に1年分を支払ったもので、決算日は9月30日である。決算手続の全体像に照らして、この金額について決算整理が必要な理由を説明しなさい。また、当期分と次期分の金額を求めなさい。
女性講師4月1日から翌年3月31日までの12か月分として12,000円を支払っているので、1か月あたりは1,000円です。 決算日9月30日までに経過したのは、4月から9月までの6か月です。 したがって、当期に属する金額は1,000円×6か月=6,000円となります。 残りの6,000円は次期に属する金額です。 答えは、決算整理が必要な理由は、支払時点で記録した金額を、決算日時点の実態に合わせて当期分と次期分に分ける必要があるからです。当期分は6か月分で6,000円、次期分も6か月分で6,000円です。
男性講師検算は、12,000円を12か月で割って1か月1,000円と求め、4月から9月までの6か月分が当期分になるかを確認します。当期6,000円、次期6,000円で合計12,000円に戻ることも確かめましょう。 ここまでの三題を、結論だけでなく判断理由まで説明できるようにします。
女性講師よくある誤りを確認します。試算表を作った時点で決算が終わったと考えてしまう。 決算整理と締切を同じ作業だと思ってしまう。 財務諸表は期中の帳簿からすぐ作れると考え、決算整理の必要性を見落とす。 決算手続の順序を入れ替えて覚えてしまう。 試算表・精算表・財務諸表の役割を区別できていない。
男性講師まとめると、決算は、期中記帳の内容を決算日に合わせて整理し、最終的に財務諸表へまとめる一連の手続である。 試算表は、帳簿記入や残高を確かめるための表であり、財務諸表そのものではない。 決算整理は、期末時点の正しい収益と費用、資産と負債を示すために行う。 締切は、当期の帳簿を区切って次期へつなぐための手続である。 財務諸表は、決算手続の結果をまとめた最終的な報告資料である。
この講の確認問題
登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。
