現金の範囲と現金取引
簿記上の現金に含まれるものを確認し、現金の受け取りと支払いに関する基本的な仕訳を学びます。紙幣や硬貨だけでなく、簿記で現金として扱うものを区別し、現金勘定を正しく使えるようになることを目指します。
この講で分かるようになること
簿記上の現金に含まれるものを判別し、現金取引を仕訳できる。
- 簿記上の現金と日常感覚の現金の違いを説明できる。
- 現金勘定の増減を借方・貸方で判断できる。
- 取引の内容から相手勘定を落ち着いて判定できる。
前提知識
- 仕訳の基本形
- 借方と貸方の意味
- 資産の増減の記入方向
ひとつ前の講:証ひょうを帳簿の流れでつなぐ
要点
- 簿記上の現金には紙幣・硬貨だけでなく、すぐに現金化できる一定の証書類が含まれる。
- 現金は資産なので、増加は借方、減少は貸方に記入する。
- 現金取引では、現金が増えたのか減ったのかを先に判断すると仕訳しやすい。
- 取引の原因となった相手勘定をあわせて考えることが重要である。
判断のルール
- 現金が増加したら借方に現金を記入する。
- 現金が減少したら貸方に現金を記入する。
- 受け取った内容や支払った目的に応じて、相手勘定を決める。
- 簿記上の現金に含まれるかどうかは、換金性と取り扱いのルールで判断する。
例題
例題1商品を現金で売り上げた場合
商品を現金 48,000円で売り上げ、代金はその場で受け取った。仕訳を示しなさい。
答え借方:現金 48,000円 貸方:売上 48,000円
考え方商品を売ったので収益である売上が発生します。また、代金をその場で受け取っているので現金が増加します。現金は資産であり、増加は借方です。したがって、借方に現金48,000円、貸方に売上48,000円とします。
確かめ借方合計48,000円、貸方合計48,000円で一致しています。現金は受け取りなので借方、売上は収益の発生なので貸方で適切です。
例題2備品を現金で購入した場合
事務用の備品を 12,500円で購入し、代金を現金で支払った。仕訳を示しなさい。
答え借方:備品 12,500円 貸方:現金 12,500円
考え方備品を購入したことで資産である備品が増加します。よって借方に備品を記入します。一方、代金を現金で支払っているため、現金は減少します。現金は資産なので、減少は貸方です。したがって、借方に備品12,500円、貸方に現金12,500円となります。
確かめ借方合計12,500円、貸方合計12,500円で一致しています。購入したものは備品であり、現金支払いなので現金は貸方です。
例題3他人振出小切手を受け取った場合
商品を販売し、代金 30,000円として他人振出小切手を受け取った。仕訳を示しなさい。
答え借方:現金 30,000円 貸方:売上 30,000円
考え方他人振出小切手は簿記上、通貨代用証券として現金に含めます。そのため、小切手を受け取ったときは現金勘定で処理します。商品を販売しているので売上が発生し、代金を受け取っているので現金が増加します。よって借方に現金30,000円、貸方に売上30,000円とします。
確かめ借方合計30,000円、貸方合計30,000円で一致しています。他人振出小切手を現金として扱えているかが確認のポイントです。
よくある間違い
現金を受け取ったのに、現金を貸方にしてしまう。
他人振出小切手などを現金ではなく別の勘定で処理してしまう。
商品を売ったのか備品を売ったのかを見落とし、相手勘定を誤る。
借方・貸方の金額を一致させずに仕訳してしまう。
この講の用語
- 現金げんきん
- 簿記で用いる資産勘定の一つ。紙幣・硬貨のほか、簿記上現金として扱う一定の証書類を含む。
- 通貨代用証券つうかだいようしょうけん
- 他人振出小切手、郵便為替証書、送金小切手など、通貨の代わりとして取り扱う証書類。簿記上は現金に含める。
- 借方かりかた
- 仕訳帳や勘定口座の左側。資産の増加は通常こちらに記入する。
- 貸方かしかた
- 仕訳帳や勘定口座の右側。資産の減少は通常こちらに記入する。
- 相手勘定あいてかんじょう
- ある勘定と対応して仕訳に登場する、もう一方の勘定科目。
章立て
- 0:00導入表紙。二人の講師と講義タイトル、学習目標を親しみやすく提示する。
- 0:18中心概念導入概念。日常の現金と簿記上の現金の違い、本講の範囲を整理する。
- 0:56重要用語中心概念。通貨代用証券と現金に含める考え方を図解する。
- 1:29基本ルール重要用語。現金、通貨代用証券、借方、貸方、相手勘定の最小限の整理。
- 1:50判断手順基本ルール。現金増減の方向と相手勘定、同額一致を示す。
- 2:14判断の確認判断手順。現金の増減→相手勘定→金額確認の順で解く流れ。
- 2:34例題1 商品を現金で売り上げた場合例題1。商品を現金48,000円で売り上げた場合の判断と仕訳。
- 3:30例題2 備品を現金で購入した場合例題2。備品を12,500円で購入し現金で支払った場合の判断と仕訳。
- 4:29例題3 他人振出小切手を受け取った場合例題3。他人振出小切手30,000円を受け取った場合の判断と仕訳。
- 5:31よくある誤りとまとめよくある誤りとまとめ。誤答パターンと重要4点を一枚で整理する。
講義の書き起こし
無料公開している講義は、読んで確認できるように全文を載せています。
女性講師第15講は、現金の範囲と現金取引です。目標は、簿記上の現金に含まれるものを判別し、現金の受け取りと支払いを正しく仕訳できるようになることです。
男性講師ふだんの現金と、簿記の現金は少し違うんですね。
女性講師はい。日常会話では紙幣や硬貨を思い浮かべますが、簿記ではそれより少し広く考えます。手元のお金だけでなく、通貨の代わりとして扱えるものも現金に含めます。
男性講師まずは、何が現金に入るかを見分けるのが大事ですね。
女性講師そのとおりです。ここがあいまいだと、現金勘定を使う場面で別の勘定を使ってしまいます。この講義では、現金の範囲と現金取引の基本仕訳に集中します。
男性講師預金や現金過不足は、ここでは混ぜないということですね。
女性講師中心は、簿記上の現金の考え方です。紙幣・硬貨のほか、通貨代用証券を現金に含めます。代表例は、他人振出小切手、郵便為替証書、送金小切手です。
男性講師名前を丸暗記するより、通貨の代わりと考えるんですね。
女性講師はい。問題文の中で受け取ったものが簿記上の現金かどうかを判断できることが重要です。特に他人振出小切手は、現金勘定で処理する点を押さえましょう。
男性講師重要用語は、短く整理して覚えればよさそうですか。
女性講師はい。現金は資産勘定の一つです。通貨代用証券は、通貨の代わりとして取り扱う証書類です。借方は左側、貸方は右側、相手勘定は対応するもう一方の勘定科目です。
男性講師基本ルールは、現金の増減を先に見る形ですね。
女性講師そのとおりです。現金が増加したら借方に現金、減少したら貸方に現金を記入します。そして、受け取った内容や支払った目的に応じて相手勘定を決めます。
男性講師現金は資産だから、増加が借方、減少が貸方ですね。
女性講師判断手順はシンプルです。まず現金が増えたか減ったかを見ます。次に、その原因となった相手勘定を考えます。最後に、借方と貸方の金額が同額か確認します。
男性講師先に現金の動き、あとで相手勘定、最後に金額確認ですね。
女性講師例題1、商品を現金で売り上げた場合です。商品を現金 48,000円で売り上げ、代金はその場で受け取った。仕訳を示しなさい。
男性講師どの事実を確認し、どのように答えればよいですか。
女性講師商品を売ったので収益である売上が発生します。また、代金をその場で受け取っているので現金が増加します。現金は資産であり、増加は借方です。したがって、借方に現金48,000円、貸方に売上48,000円とします。 答えは、借方:現金 48,000円 貸方:売上 48,000円 借方合計48,000円、貸方合計48,000円で一致しています。現金は受け取りなので借方、売上は収益の発生なので貸方で適切です。
男性講師次は例題2、備品を現金で購入した場合です。事務用の備品を 12,500円で購入し、代金を現金で支払った。仕訳を示しなさい。
女性講師備品を購入したことで資産である備品が増加します。よって借方に備品を記入します。一方、代金を現金で支払っているため、現金は減少します。現金は資産なので、減少は貸方です。したがって、借方に備品12,500円、貸方に現金12,500円となります。 答えは、借方:備品 12,500円 貸方:現金 12,500円 借方合計12,500円、貸方合計12,500円で一致しています。購入したものは備品であり、現金支払いなので現金は貸方です。
男性講師最後に例題3、他人振出小切手を受け取った場合です。商品を販売し、代金 30,000円として他人振出小切手を受け取った。仕訳を示しなさい。
女性講師他人振出小切手は簿記上、通貨代用証券として現金に含めます。そのため、小切手を受け取ったときは現金勘定で処理します。商品を販売しているので売上が発生し、代金を受け取っているので現金が増加します。よって借方に現金30,000円、貸方に売上30,000円とします。 答えは、借方:現金 30,000円 貸方:売上 30,000円
男性講師検算は、借方合計30,000円、貸方合計30,000円で一致しています。他人振出小切手を現金として扱えているかが確認のポイントです。 ここまでの三題を、結論だけでなく判断理由まで説明できるようにします。
女性講師よくある誤りを確認します。現金を受け取ったのに、現金を貸方にしてしまう。 他人振出小切手などを現金ではなく別の勘定で処理してしまう。 商品を売ったのか備品を売ったのかを見落とし、相手勘定を誤る。 借方・貸方の金額を一致させずに仕訳してしまう。
男性講師まとめると、簿記上の現金には紙幣・硬貨だけでなく、すぐに現金化できる一定の証書類が含まれる。 現金は資産なので、増加は借方、減少は貸方に記入する。 現金取引では、現金が増えたのか減ったのかを先に判断すると仕訳しやすい。 取引の原因となった相手勘定をあわせて考えることが重要である。
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